【前回のコラム】「LAの路面で砂まみれになりながらMVを撮影した話」はこちら
英語に泣かなかった日は一日もない
今回は、海外で暮らしたり仕事をしたりする上で当たり前ですが避けて通れない存在、憎くて仕方が無いあの野郎、そう、「英会話」について書いてみます。
ここまでこのコラムにいろいろなことを書いてきましたが、英語についてはあまり触れてきませんでした。それどころか、海外で講演したり、ニューヨークで部屋を借りたり会社をつくったりしているわけですから、自分で読み返すにつけ、「あーこの人英語できるんだろうなー。いいなー」なんて思ってしまいます。
とんでもない話です。この数カ月間、英語に泣かなかった日は一日たりともありません。日本でも週一で英会話の授業を受けていましたし、英語でプレゼンしたことだってあります。だから、いわゆる英語アレルギーのようなものはありませんでした。
無理矢理でも英語でコミュニケーションをすることに抵抗は特にありません。「アップル」をいい感じの発音で「Apple」なんて言ってしまっても、気恥ずかしさはありません。
それなのに。準備の段階からして、もうなんというか、全然理解できないし、全然通じないわけです。とにかくみんなしゃべるのが速い。日本で外国人の方としゃべる際は、彼らもアウェイなわけで、基本的にスローダウンしてしゃべってくれます。しかし、彼らがホームでしゃべる高速言語のわけわからなさと言ったら。こちらのテレビで「ドラゴンボール」を見ている際、クリリンが言っていることが速過ぎて全然理解できなかったときの絶望感たるや、筆舌に尽くしがたいものがあります。
街中を飛び交う高速英語がわからない
例えば、部屋を借りるにしても、不動産屋さんや家主の言っていることがさっぱりわからない。ニューヨークにはいろんな国からいろんな人がやってきますから、いろんな人がいろんなしゃべり方で、なんかものすごい高速でいろいろしゃべるわけです。
この場合、不動産屋さんはアフリカ出身の方でアフリカなまり、家主はイスラエルなまり。というよりなまり云々ではなく、そもそも会話が高速すぎて全然理解できない。そして、「わかんなかったからもう一度スローで言ってください」と言うと、彼らはなんかイライラし始めるわけです。よく、英会話を学んでいると、「わからなかったらゆっくりしゃべってもらいましょう」みたいなことを言われたりするものですが、みんな、何か知らないけど怒るのです。
最終的によくわかっていないのに「オーケー。オーケー」なんてニコニコ受け答えしてしまって、微笑むほかに何もできない日本人と化してしまいました。
お店の人なんかは本当に顕著です。ドラッグストアなどで、店員さんはこちらの英語が理解できないと、イライラしながら眉間に皺を寄せて「ハァ?」なんて言ってくるわけです。日本で暮らしていると、そんなに頻繁に「ハァ?」なんて言われることはありません。しかしここでは毎日のようにそれを言われるわけです。怖い! 怖くて逃げ出したくなります。
一番ひどいのは電話です。たとえば病院の予約を取らなくてはならないとき、電話をするわけです。電話というものは基本的に音声が劣化するし、表情などのコンテクストから意味を類推することができないので、普通の会話の5倍程度は難しいものです。
そして、電話での会話で相手が「ハァ?」状態になったあかつきには、一方的に電話を切られたりするわけです。神はいないのか。ニューヨークという名の砂漠です。